| ●● 幽霊少女の溜息 |
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晴れ渡る外とは一転、リビングに重苦しい雰囲気が漂っていた。 フローリングの上に正座をした困り顔のアスランを見下ろしながらマユは空中で地団駄を踏む。 「鬱陶しいのよ! いつも、いつも、いつも! 振り返ったら背後にいるのよその猫は!!」 指差した先には金色混じりのほわほわの産毛につつまれた白い子猫。ステラと名づけられた猫はアスランの膝の上で丸くなりながら「みゃぁ」と鳴いた。 一月ほど前 アスランから家族が増えると言われたらとうとうあのカガリさんと結婚するのかと思いきや、そのカガリさんの家で産まれた子猫を引き取ってきた。 家族が増えるってそっちか、というあたしの突っ込みは間違ってないはずだ。 しかし家族が増えるイコール結婚。思い込みとは恐ろしいものである。 そもそもあの二人は恋人同士でもないのだから結婚は一足飛びかと広い心を持って見守っているのだが一向に進展が見られない。 だいたい三歩進んで二歩下がるどころか三歩下がって元通り。後退しないだけいいのかもしれないが呆れてものが言えないとはこのことだ。 子猫が来た日。 ケージの中で小さくなっている子猫に妹ながらどこからそんな声が出るのだと身震いをしながら兄の様子を眺めていると、 いそいそとキャットタワーを組み立てていた。いや、作っているときは何をしているのかわからなかったけれど。趣味はDIYです。 なんて間違っても答えられないほど不器用な兄にしては上出来な仕上がりのキャットタワーはマユが一日の大部分を過ごしているリビングに設置された。 そんな進まない人たちよりも猫に興味がいくのは自然な成り行きだろう。 現在この家に人間二人、幽霊一人、猫一匹が暮らしているが昼間は基本的にマユとステラしかいない。 最初は寂しいのだと思っていた。 猫とは寝る子。眠っている時間は長いが常に寝ているわけではない。 起きているときは遊び相手が欲しいだろうと構ってきた。ステラに触ることが出来ないことが残念、と幽霊の身を嘆きもしながら。 なんと微笑ましい勘違い。 愛くるしい見かけに騙されていた。 あの姿勢。あの動き。 動物番組を見ている時に気付いてしまった。 (教養を得るためにもテレビを観るのは大事なことだ) ヒョウやライオンに比べたらふよんふよんの体をしているがあれも獲物を狙う一端のハンターだと。 |