過去と未来と現在進行形 Troubles diary of Athrun


『【きのこ】と【たけのこ】または【たけのこ】と【きのこ】』
「アスラン」
 玄関でアスランを出迎えたカガリは思いつめたかのように真剣な表情をしていた。
「どうしたんだ、カガリ」
 何か大変なことでもあったのだろうか。
 意を決したように胸元の手を握り締めカガリは言った。
「アスランはきのことたけのこ。  どちらが好きだ?」
「……きのことたけのこ?」
 予想外の発言に質問の意図が読めずアスランは首を傾げる。
 春のたけのこ。
 秋のきのこ。
 年中食べることが出来るとはいえ今はどちらも旬の時期ではない。
「今日の献立?」
「夕飯は関係ない、というかもう出来ている。アスランがきのことたけのこのどっちが好きなのか知りたいんだ」
 ずい、とカガリが迫りくる。
 なぜ、という疑問が頭の中を駆け巡る。
 あえて言えばどちらも嫌いではなければ特に大好物というほどでもない。料理に入っていれば残さず食べる。
きのことたけのこのアスランにとっての認識はそんなものだ。
「きのこ……かな」
 それでもきのこという回答はカガリの期待していたものらしく笑みを浮かべアスランに抱きついた。
  っ!」
「そうか。アスランとはやっぱり一緒だと思ったんだ」
 スキップをしそうな足取りでカガリはキッチンへと去っていく。その背を見送っていると今度はリビングからステラが顔をのぞかせた。
「おかえりなさい」
「帰りました」
 とてとてとステラはアスランの傍にくいと袖を引く。
「あのね」
「どうしたんだ、ステラ」
 うん、と頷くとステラは内緒話でもするようにささやいた。
「ステラはきのことたけのこ、どっちも好きなの」
 ステラはたけのこの煮物は苦手だが、煮物を使った天ぷらは好物だ。きのこ類も種類によっては味が苦手であまり得意ではない。
 そんな彼女が何故「好き」なのだろうか。
「おにいちゃん、ごはん食べにいこう」
 首をかしげるアスランの前に、きのこの和風ハンバーグ、きのこの炊き込みご飯、きのこのお吸い物、 きのこのおひたしときのこ三昧な品が食卓を飾る。
(なぜ?)
 やはりよくわからないままアスランは箸を取った。