過去と未来と現在進行形 RECORD:02


『冬の味覚は湯けむりと』より
 本部と書かれた札が貼られたテントの下でステラは真剣な面持ちで持ち手を見つめていた。
「次が最後の一回だね」
 担当の人にそう言われながらステラは小さく息をはくとガランガランと持ち手を回す。
 小さな音をたて金色をした玉がひとつトレーの中へ落ちてきた。白色の玉のなかに混じり輝く玉。
 一瞬の静寂ののち盛大に鐘が鳴らされる。
「大当たりー!! おめでとう! 特賞の日帰り温泉旅行だよ!」
 ステラはきょとんと小首をかしげ、傍らの男を見上げた。
「……洗剤は?」
「ちい姫、洗剤は買えばいい」
「ステラ、洗剤が欲しかった」
「小学生はお菓子の詰め合わせのほうが狙いじゃないのか」
「ステラ、好きなお菓子を買ってもらえるほうが嬉しい」
  現実的だな。さ、それを持って次は姫さんとアスランにおねだりだ」
 ディアッカはステラの代わりに特賞を受け取りながら言った。


 収穫祭と銘打った催し物が黄昏小道を含む一帯で開催されていた。黄昏小道の近くにある広場には特設ステージが設けられ賑やかな音楽も聞こえてくる。
 つい先日まで暑さが残っていたと思っていたが季節は順当に巡りいつしか冬の足音が近づいていた。
「美味しい」
 カニの足が飛び出す椀の中身は味噌汁。
「いい出汁が出ているな」
 根菜もほどよく煮込まれ、肌寒い屋外だからか温かい汁物が身にしみる。
「大根も味が染みていておいしいわ」
「ぼくとしてはもうちょっとカニの身が欲しいところなんだけれど」
 カニの足の中身をなんとかして食べようとキラは箸を動かしながら言った。
「諦めろ」
「あら、でもキラ君じゃないけれどわたしもカニが食べたくなるわ。さすがにここでカニの身をほじることは出来ないけれど」
「同感だ。呼び水じゃないけれどカニが食べたくなるよな」
「カニ食べたいなー」
 カニの足を片手にキラはちらっとアスランを見た。
「水炊きでいいか」
「焼きがいいな」
「キラが持ってきたらいいぞ」
 アスランが返すとキラは頬をふくらませた。
「ステラたちは遅いな。せっかくのカニ汁が冷めてしまう」
「どこで油を売っているのかしら」
「ステラ、油売ってないよ」
 きょとんと首をかしげながらステラがいた。
「あらステラちゃんお帰り。油を売っているのはステラちゃんじゃなくてディアッカね」
「いや、俺も油は売ってないし」
「人が多かった?」
「ああ、やっぱり考えることは一緒みたいでさ。並んだ。いやー面白かったぞ。ちい姫、これを姫さんに」
 受け取ったステラはカガリにはい、と差し出した。
「これをもらったの」
 ありがとう、と受け取ったカガリは封筒を開ける。中身を取り出し一瞥すると隣にいるアスランの袖を引っ張った。
  っどうしたんだ? カガリ」
「アスラン、これ」
 カガリはステラから渡された封筒の中身を渡す。
「特賞、日帰り旅行券。冬の味覚カニ会席をご賞味ください」
 読み進めていたアスランの声がふと止まる。
 アスランはキラの目の前に紙を突きつけた。
「ふべっ、アスラン何をするんだよ」
 言いながらキラはアスランが止った箇所を読み上げる。
「タケミカヅチ温泉青嵐館  
 カガリ、アスラン、キラは顔を見合わせる。
「ステラ、カニ食べたい」
「それペア券なんだよ。だからさ、別料金は必要だけれどみんなで行かない? うちの車なら六人乗れるからさ」
 ディアッカの提案にミリアリアは手を合わせた。
「いい案じゃない。行きましょうよ」
  わかった。俺が段取りするよ」
 アスランは溜息をひとつ吐いた。