彼と彼女の恋愛事情 4





 夜空に瞬くのは満面の星。
 半月が青白く天に浮く。
 噴水のそばに腰かければ、吹き上げる水しぶきが飛び散ってくる。
 噴水のなかへ手を入れと水の冷たさが心地よい。
 つい行儀悪く、靴をぬぎズボンの裾をぬぐい上げ、足を浸す。
 ぽちゃん、と指先を伝う水が滴り落ちた。

「こんなところにいたのか」

「アスラン」

 肩越しに振り返れば、苦笑を浮かべながらこちらへ歩み寄ってくる。

「冷たくないか?」

「うん。冷たくて気持ちいいぞ」

 えい、とカガリは水滴をアスランに向かって散らす。
 屋敷から漏れる明かりが、キラキラと水滴を光らせた。

「うわっ、何するんだ」

 前髪をかかった水を振り落とすアスランにカガリは笑う。

  やりたいことが、いっぱいあったんだぞ」

「うん」

「久しぶりの休みで、アスランの誕生日でさ」

 つと星が流れ落ちていく。

「それなのに、言い争いをして、起きたらいなくて」

「カガリ  

「アスランが出掛けたって聞いて、すごくショックだったんだからな」

  すまない。だが、俺はキラのところへ行くと言って出て行ったぞ」

「そうか」

 見上げた空を覆うのは夜の闇。
 日は落ちて、一日は終わりを告げた。次に日が出ときはそこにいるのは、ただの十七のカガリ・ユラ・アスハではなく、オーブの代表首長のカガリ・ユラ・アスハだ。
 なんだかカガリは悔しくて、そばにあったアスランの手を引いた。
 そのまま二人は大きな水しぶきを上げ、噴水の中へ倒れこむ。

「あーあ、びしょびしょだ」

「カガリッ!!」

「少し時間が遅いが、水遊びだ」

 のん気なカガリの声に、アスランはため息を吐くと、前髪をかきあげた。

「今日のお詫びに姫君につきあうよ」

 俺の誕生日なのに、という言葉をカガリは都合よく聞き流しておこう。

「うむ。そうしておけ」

 ふんぞり返るカガリの姿が、昼間のキラそっくりでアスランはつい吹き出した。

「な、なんだよ」

 突然のアスランの笑い声に、何がんだか分からないカガリは声を高上げる。

「いや、すまない。今のカガリの格好が昼間のキラにそっくりだったものだから」

 ふん、と顔を背けても、後ろからまだアスランの笑い声が聞こえてくる。
 冷たさのためか上気した頬に、冷たい手が添えられた。

「君に一日の魔法は遅れないけれど、一夜の魔法を送るよ」

「アスラン?」

 彼の顔を見るとそこには静かな笑みがあった。

「シンデレラって知っている?」

「御伽噺のか?」

 ああ、とアスランは頷きカガリの右手をとる。

「シンデレラの魔法は十二時の鐘がなるまで。今日の残りは少ないけれど」

 そっとアスランは右手の甲に口付ける。

「魔法が解けるまで、アレックスではなくアスランとして君に付き合うよ  俺の姫君」









book / 2005.11.13
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