彼と彼女の恋愛事情 3





 いつもは美味しい食事も今日は味がしなかった。
 なんで。
 どうしてこんなに胸が苦しいんだろうか。
 ひっこんだはずの涙がまた溢れてくる。
 カガリはベッドの上に蹲るようにへたり込んだ。
 何もかもが遠い。
 いつのまにか陽射しは西空に傾いている。

「……そうだ。キラたちに連絡を入れないと」

 最近沈みがちだった彼のためにもとアスランの誕生日にサプライズ計画を考えたのはカガリだった。
 それなのに。
 アスランは朝からどこかへ出掛けてしまった。

「一言いってから出て行くべきだ」

 柔らかい布団を叩けば、柔らかい抵抗が戻ってくる。

「どこに行ったんだよ、アイツは!」

  キラたちのところだよ」

 男にしては少し高い、優しい声。
 声とともに、後ろからそっと抱きしめられる。
 静かな部屋にベッドのスプリングが軋む音がした。
「アスラン?! な、なんでお前がわたしの部屋にいるんだよ!!」

「一応、ノックはしたんだけれど、カガリは気づいてないみたいだから……」

 ごめん、とアスランは腕に力を回すとカガリにささやいた。

「……アスラン?」

 温もりは感じるものの、彼の顔は後ろにあるため見えない。そのことに一抹の寂しさを得たカガリはなんとかアスランの顔を見ようと頭を回す。
 アスランはカガリの肩口に顔を埋めたままだ。

  昨日はごめん」

 その言葉にはっとする。

「あ、わたしのほうこそごめん。あの、大嫌いっていうのは違うからな!!」

 腕の力がゆるまったのをみて、カガリは身体を向き直しアスランに抱きついた。
 慌てて帰ってきたのか、彼の紫紺の髪はところどころ跳ねている。

「キラから聞いて、いや、その昨日、俺は、えっと」

 自分でも何を言っているのか分かっていないのだろう。カガリは小さく息を吐くとさらさらの髪を梳いていく。

「昨日、カガリが一緒に出掛けようと言ってくれて、俺は嬉しかったんだ。でも、カガリは連日の閣議で疲れている。だから、休ませなくてはと思った」

 それに、とそれまでカガリを見つめていた翡翠の瞳を外す。

「実は、……昨日晩、カガリと別れたあとキラから連絡ももらって、朝一で向こうに行っていたんだ。それで……」

 カガリは頷いた。
 キラのところへ行ったということは、例のサプライズ計画も知っているだろう。

「君の話も聞かずに……ごめん」

 アスランは目を伏せ、頭を下げる。
 なんだか彼のそんな姿を見ていると、今まで悩んでいたことなどどうでもよくなってしまう。

「わたしのことを気遣ってくれたんだろう」

 いつみてもアスランの瞳は綺麗だと思う。
 器用なのに不器用。

「ごめん」

 口癖のように何度もあやまるアスランの口を、カガリは己の口でふさぐ。
 突然のカガリからの口付けにアスランは顔を真っ赤にする。
 話たいことはたくさんあるけれど。


「誕生日おめでとう、アスラン」


 まずは、伝えたいことを  









book / 2005.11.13
web / 2024.05.26