| ●● 幽霊少女の憂鬱 1 |
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最期の記憶は押さえつけられるような圧迫感。 『番組の途中ですが臨時ニュースをお伝えします』 サッカーの国際親善試合に参加することになった兄の応援のため、家族旅行を兼ねて初めて外国へ行くことになった。 小学校は自己欠席。事故で欠席するの、と尋ねたら母に大笑いされたけれど。 担任の先生にはせっかくの機会だから楽しんで行ってらっしゃいと言われた。 一足先に出発した兄を追いかける形で、数日前に兄を見送った空港で両親と飛行機に乗った日は梅雨の晴れ間がのぞいていた。 パスポートを片手に、初めての事に心弾ませて。 定刻通り離陸した飛行機は目的地に向かって進む。 座りっぱなしでお尻が痛かった。 ああ、もうすぐ立つことができるんだ。 初めての異国よりも、数日振りに会える兄よりもベルト着用サインを見て思ったことは、それ。 だって仕方ない。今までこんなに長時間移動をしたことがなかったのだから。 『さきほど午後十一時十六分頃、ユーラシア連邦ジブラルタル国際空港にてオーブ航空機が着陸に失敗しました。同機は現在、滑走路にて機体が炎上しており、乗客・乗員の安否は不明となっています』 ジブラルタル国際空港を目指し飛行機は滑るように高度を下げる。 エンジントラブルによってバランスを崩した機体は着陸を試みて海上に迫り出した滑走路に叩きつけられ炎上する。 飛行機には国際親善試合に参加する選手の家族が乗っていた。出迎えのために空港を訪れていた彼らの多くは目の前でその瞬間を見てしまった。 燃え上がる飛行機。慟哭。鳴り響くサイレンの音。 けれど、それらを知らない。 人生はそこで終わったのだから。 同機は墜落、炎上した。 乗客・乗員五〇七名全員の死亡を確認。 同日設置された事故調査委員会はブラックボックスの回収、解析を始めたと発表した。 マユ・アスカ(享年九) 気がつけば目の前に自分の遺影があった。 そして、第二の人生はここから始まったらしい book / 2011.12.30
web / 2024.05.31 |