幽霊少女の憂鬱 5  やっぱり嫌です、幽霊だから





 訂正します。
 この世から去れるのであれば、お坊さんでも除霊する人でもいいと思ったけれど、丁重にお断りさせていただきます。
 だって、あんな恐ろしいものは遠慮するに限る。
 だいたい、なんであの男には僧侶の友達がいるんだ。
 毎回、なんやかんやと言って、塩を盛って帰っていくものだから、しばらくはその場所に近づけなくなるし、他にも神社の跡継ぎとか陰陽師の裔とかよくわかんないのがいっぱいだし。
 そんなのが来るたびに祓われそうになるこっちの身にもなってくれ。
 お昼からテレビを見ようと思っていたのに。
 今日の楽しみが……。
 とりあえず、本日も脅威が去るまで隠れています。



「やっぱり、居るね」

 玄関で剃髪した男は言った。

「悪いものじゃないみたいだけれど、この家にはいる」

 あっちかな、いや、こっちか。

 男はぶつぶつと言いながら、懐から数珠を取り出す。

「とりあえず、祓おうか」

「いや、祓う前に入ってくれないかキラ。後ろがつかえてるから」

「あ、ごめん、カガリ。とりあえず、盛り塩だけしておこう」

 そくさくと玄関に塩を盛るキラを避けながら、カガリは小脇に抱えたケージをキラに当てないように用意されていたスリッパを履いた。

「二人ともいらっしゃい。この子がそう?」

「こんにちは、アスラン。ああ、そうだぞ」

 アスランがケージを覗くと、小さくなった子猫が恐る恐る外を窺っていた。

「ありがとうな。この子を引き取ってくれて」

 はにかんだカガリにアスランも笑みを浮かべる。

「ここで立ち話もなんだからこちらへどうぞ。新作のケーキを作ってみたから試食をしてもらいたいんだ。それにこの子の場所もこっちにあるから」

 カガリを即しながら、未だに玄関から一歩も動かないキラに声をかける。

「キラもお茶を用意しているから早く来いよ」

 うん、と生返事をしながら数珠を振りまわしている。

(離れにいるからマユちゃんは今回も大丈夫だろう。ただ、あそこはテレビを置いてないから、夕方には用意しておいたケーキを供えないと)

 心中で友に謝罪をしながら、アスランはリビングの扉を閉めた。

















 マユ・アスカ(享年九)
 人生を終えてから色々豊かに幽霊暦を加算していた。









book / 2011.12.30
web / 2024.05.31